6/24(日)『ブラッディ・ミルク』上映後Q&Aレポート

ブラッディ・ミルク

6/24(日)『ブラッディ・ミルク』上映後Q&Aレポート

ゲスト:ユベール・シャルエル(監督)
    スワン・アルロー(俳優)
モデレーター:佐藤久理子

過酷な酪農の現状を描いたユベール・シャルエル監督の初長編作品である『ブラッディ・ミルク』が上映された。カンヌ国際映画祭の「監督週間」にて特別上映され、セザール賞では作品賞、主演男優賞、助演女優賞の三冠に輝き、フランスでは大ヒットを記録している。監督のユベール・シャルエルと主演俳優のスワン・アルローが上映後に登壇した。

本作はシャルエル監督のオリジナルアイデアで、脚本にも参加されていますよね。酪農の環境に育ったとお聞きしましたが、どのようなアイデアで作られましたか?

ブラッディ・ミルク
ユベール・シャルエル監督:本日はありがとうございます。満席で嬉しいです。3つのアイデアがありました。1つ目は、私は酪農の家に生まれ、ひとりっ子なのですが、家業の跡を継いでいません。自分なりに実家の農場の息を吹きかえらせて、ある意味ではきちんと「さよなら」を言いたいという思いがありました。2つ目も生い立ちに関係しますが、私が10歳ぐらいの時にヨーロッパで狂牛病が蔓延しました。その様子が心に深く残り、自分の一部になっています。当時は感染源や感染ルートがわからずに、両親や近所の酪農家は不安に陥りパニック状態だったため、強く印象に残っています。3つ目はジャンルを越えた作品を目指しました。特殊なテーマですしドキュメンタリー調でもあるのですが、複数のジャンルを混ぜたフィクションにするということを考えました。フィルムノワール、スリラーもあればコメディーやファンタジーの要素もミックスしました。

主演のスワンさんは、どのようにして監督とお会いになったのでしょうか?

ブラッディ・ミルク
スワン・アルローさん:オーディションを受けて、この役をいただきました。私はパリ育ちで、田舎はヴァカンスで行く程度でしたので不安もありましたが、キャスティングディレクターを介して監督と会い、すぐに意気投合して冗談も言い合うような仲になりました。そして1ヶ月間は農家に行って役作りをしようと約束し、酪農家である監督のいとこの家に、役者というよりは一人の研修生として最初の10日ほど滞在しました。撮影は監督の実家の農場で行ったのですが、1年前に閉鎖されていたので約2週間で準備を整え、牛を運び入れて牛を環境に慣れさせ、僕たちも牛に慣れるようにして、お互いが慣れ合うことができた頃に、カメラが来て撮影がスタートといった段取りです。私はすっかり慣れていたので「私の農場に何をしにきたんだ。邪魔しないでくれ」という気持ちになったり、カメラの前で演技するよりも搾乳の方が大事になっていましたね。牛の世話もしっくりときていたので、撮影がいつスタートしたのかわからないぐらい自然でした。

牛の伝染病というテーマでは出資者を見つけるのは難しくはなかったですか?
 
ユベール・シャルエル監督:幸いに大丈夫でした。シナリオが書き上がる前のアイデアだけの段階でプロデューサーと会った時に、フランスは農業大国だし社会問題を扱っていて、とても関心が持てる作品だけど、牛はセクシーでないとか殺人事件もあった方がいいんじゃないかと言われてショックでした。一旦シナリオを完成させるとわかってもらえたのでよかったです。

フランスでは酪農家の自殺が多いと聞きましたが、本当ですか?

ユベール・シャルエル監督:はい。農家の自殺が多くて、フランスでは社会問題になっています。具体的な数字はわかりませんが、農家に限ると2日に1人の自殺者がでているといわれています。シナリオを書くにあたって酪農家や獣医など多くの人に話を聞きましたが、狂牛病が流行したショックで鬱になってしまう人や、発症してしまった牛を1日に100頭も殺さなくてはいけないという過酷な状況に耐えられず鬱になってしまう方が多くいるそうです。

スワン・アルローさん:酪農家は週に7日間、24時間仕事をしていて、休みが1年に1週間ぐらいです。例えば1リットルのミルクの値段が、30ユーロから29ユーロに下がってしまっても、その値段で売らざるを得ないという状況で、どんどん追い詰められ、事業は縮小してしまう。狂牛病だけでなく、EUの競争力にさらされたりと、乳業や酪農という職業全体が色々な危機に直面しています。

※『ブラッディ・ミルク』は日本での公開は未定となっております。

ブラッディ・ミルク
☆サイン会時の様子

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