実施日:2024年3月21日(木)20:00~
登壇者:ジュスタン・トーラン
開催場所:横浜ブルク13

ベルトラン・ボネロ監督が体調不良のため来日が叶わず、プロデューサーのジュスタン・トーランが一人で登壇。Q&Aの前にボネロ監督から預かってきたメッセージを代読した。映画を観た人たちとの質疑応答を楽しみにしていたというボネロ監督は本作について「愛、ロマン、時代などいろいろなジャンルをSFと混ぜたもの。それぞれが相殺せずに補い合って作り上げられている作品です」と解説。メロドラマを描きたいと思い浮かんだのが、ヘンリー・ジェイムズの短編小説『ジャングルのけもの』だったそうで「非常に美しく、感情豊かな作品です。この精神を映画に入れ込んでいる一方で、短編だけの展開でなく、私の考えた展開の作品になっています」とコメント。短編小説も映画も“恐れと愛”という二つの概念を表しているとし、「この二つがあるから私たちは生きていけると感じることができる。それを最後までかなり突っ込んで探求した映画です。大変な作業でしたが、俳優、プロダクション、チームのみんなで協力をして最終的には私が求める映画としての冒険をすることができました」と映画完成までの道のりと想いに触れたメッセージが伝えられた。

作品の構想は「だいぶ前から、何回も話し合っていました」と振り返ったトーランは「最初は連続ドラマの形でシナリオを書いていました。いろいろと話し合う過程で映画にすることに決め、題材を出し議論をして、この形になったという経緯があります」と説明。本作は悲劇にはなっているが、愛の物語。ボネロ監督と愛の物語を一緒にやりたいと思っていたトーランは「将来を舞台にして過去の時代を考えるというアイデアがすごく面白いと思いました」と、笑顔を見せていた。
複雑でありながらテーマへと導かれていく巧みな物語構成が素敵という感想に「シナリオの時点で物語はほぼ出来上がっていた」と話したトーラン。「シナリオにはどの場面でどういう音楽が鳴るのかもすでに入っている、ほぼ完成形のシナリオでした」とボネロ監督による脚本の完成度の高さに言及。また、「監督は元々ミュージシャン。音楽の続きで映画(の世界)に入った人。作品からも分かるのですが、ビジュアルからも音楽の構成を感じます。撮影の仕方も音楽を思わせるようになっていて、音楽はすべて監督自身が手掛けています」と音楽畑出身のボネロ監督作品ならではの特徴にも触れた。1910年、2014年、2044年3つの時代が描かれる本作。「3つの時代とそれぞれの時代に登場する登場人物をいかに繋いでいくのかが、監督の腕の見せどころでもあり、レア・セドゥとジョージ・マッケイが演じる役が実は…という見せ方も作品で力を入れていたところでした」と力を入れたポイントも明かした。
本物が見えにくいカオスで複雑な時代を反映した物語。分かりにくいようで、スッと入ってきたという感想も。「複雑な物語な物語にレア・セドゥ、ジョージ・マッケイはどのように向き合っていたのか」という質問にトーランは「レア・セドゥ、ジョージ・マッケイはこの映画の中の登場人物と同じぐらい性格が違います。レアは登場人物が動き出すことに自分の身を任せるような女優さん。撮影が始まってみないとどうなるのか分からないタイプです。ジョージは逆にものすごく準備をして撮影に入る人。監督にもたくさん質問をしていました。現場に入る際には読み込んだシナリオと半分は白いページ、半分はびっしり書き込みがされた準備帳を持って臨んでいました」と現場で作るセドゥ、準備をして作り上げたものを持って入るマッケイの役作りの違いを指摘していた。

3つの時代の撮影方法について「唯一、撮影機材が違っていたのは1910年のシーン」だとし、「フィルムの持つ独特のあたたかい色合い、優しい感じを出したいという監督の思いで35mmのフィルムを使っています。2014年、2044年のシーンはデジタル撮影です。ロサンゼルスの場面ではiPhoneで自撮りをしたものを混ぜて使っています。日本であまり知られていないかもしれませんが、iPhoneで自撮りをして動画を投稿し、その後殺人事件を起こしたエリオット・ロジャーという人物がいます。彼が自撮りをしたときの映像と同じような映像をこの映画では再現しています」と3つの異なる時代の撮影方法も丁寧に解説。さらに「3つの時代を描いていますが、それぞれ(の時代で)心の中の悲劇と街や国が遭遇した集団的な悲劇が重なるように作られています。1910年の場合はパリで大洪水が起こり、洪水を体験した街と体験した人々の心の悲劇を、2014年はソーシャルネットワークが普及した社会とその影響で自分の世界にこもり、出られなくなった人間の愛情の悲劇を重ねています」と本作のテーマ“悲劇”の描き方を伝えていた。