ヴァネッサ・フィロ監督、主演キム・イジュラン インタビュー

キム・イジュランさん(左)、ヴァネッサ・フィロ監督(右)

―ヴァネッサ・スプリンゴラの原作「同意」を映画化しようと思ったきっかけを教えてください。
 
監督:元々私は未成年者の保護について興味を持っていました。 私の映画ではこれまでも、未成年者の保護に関することがよくテーマになっています、映画を通して描くことで、危険な状況にいる未成年者たちに教え、警告することは、私にとってとても重要でした。
最初にヴァネッサ・スプリンゴラの原作を読んだ時、私は大変大きなショックを受けました。特に、周りにいる周囲の大人が誰1人として彼女を助けなかったことにです。だからこそ、これを映画化する必要性を感じていましたし、それは私にとってとても重要なことでした。
そして、この映画は、私1人ではなく、プロデューサーや他の技術スタッフ、俳優たちみんながヴァネッサ・スプリンゴラのメッセージを掲げ、彼女の闘いを引き継いで続けているという思いで、みんなでつくった映画です。私や横にいるキム・イジュランも闘いを続けています。できるだけ犠牲者たちが沈黙を破り発言することができるよう、私たちは後押ししています。
フランスでは徐々にですが、ここのところそういう動きがあって、変わってきていると感じています。また、日本はつい最近になって同じような告発が出ているという話を聞きました。こうした性的な権力の乱用というのは世界中どこでもある話です。だからこそ、映画化することによってそれを未然に防ぎ、啓発することが必要でした。
 
―キム・イジュランさんは出演してどうでしたか。
 
キム・イジュラン:私は、この役を演じることによって、根本的に変わりましたし、成長したと感じています。そして、周囲に対して注意をすることができるようになりました。もちろん、”同意”という言葉は知っていましたが、今ではその“同意”という言葉のニュアンスに関しても常に考えるようになりました。
また、以前に比べて周囲の人たちに対しても注意深く観察することができるようになったし、人のそういった話も聞けるようになりました。自分自身に対する信頼感そして自分の直感も信じることもできるようになりました。
改めて、この映画に出演できたことは私にとって大変な喜びでした。そして、この映画に出演したことによって、以前にはなかった、落ち着いた感覚や安定感というものを感じるようになりました。
 
―横浜の印象はいかがでしょうか。
 
監督:素晴らしいです…!ただ、素晴らしいだけに、私たちはちょっと欲求不満状態です。(笑)
この横浜フランス映画祭の代表団で日本に来ることができて大変光栄なんですが、仕事で来ている分、時間もないということもあって。この(横浜の)ポエムのような詩的な風景などを、もっともっとゆっくり見たいんですけれども、残念ながらその時間が十分にありません。ただ、私たちはまた来ます!キム・イジュランとも昨日そう話していたところです。
 
―あなたのファンがフランスを訪れた時にお勧めしたい場所はありますか。
 
監督:私たちのおすすめは、モンマルトル地域です。場所で言うと、キム・イジュランとよく行っているお店が、劇場がたくさんあるストラスブール・サンドニという地域のホテル「プロヴィダンス」のレストランで、そこでよくアペリティフを飲んでいます。そこにいらっしゃったら私たちに会えるかもしれませんね!
あとはやはり、本屋で本を買い、コーヒーを買って、セーヌ川にくいことをおすすめします!
 
―フランス映画をはじめてみる方にお勧めのフランス映画を教えてください。
 
キム・イジュラン:私は『マイ・エンジェル』という、ここにいるヴァネッサ・フィロ監督の第1作目の長編をおすすめしたいと思います。傑作です!
テーマは難しい作品なんですけれども、とにかく映像も素晴らしいですし、演じている俳優たちも素晴らしいんです。なんと言っても監督がーあえて名前は挙げませんけれど!(笑)-本当に素晴らしいんです。
 
―最後にこの作品の公開を楽しみにしている観客のみなさんにメッセージをお願いします。
 
監督:この映画をつくったのは、もちろん、何かを共有するため。そして、沈黙を破って発言をすること、対話することを後押しするためにつくりました。
私はこの映画をみた日本人の観客の方々の感想を非常に楽しみにしています。
早く、観客がどういう感情を持ったのか、どういう印象を受けたのか、聞きたいと思っています。観客のみなさんと、映画の印象について親密な話をして、みんなが本当に感じたことをやり取りして、一種の連帯感のように共有したいと考えています。
 
キム・イジュラン:フランスの観客からは、この映画を見ることによって、沈黙を破り発言することで励まされた、そして自由に話し合うことができるようになった、”同意”というその言葉が意味するものが理解できるようになったという声がありました。ですから、日本の観客のみなさんにも同じようにそれを理解してもらいたいと思っています。
 
 

コンセント/同意』 Le Consentement
ⒸJulie Trannoy

監督:ヴァネッサ・フィロ
キャスト:キム・イジュラン、ジャン=ポール・ルーヴ、レティシア・カスタ、エロディ・ブシェーズ
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