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【レビュー】6/24『愛を綴る女』

息子が出場するピアノコンクールの会場へ向かう、一見どこにでもいそうな親子3人。物語は、窓の外を見ていた妻ガブリエルが突然、血相を変えて車を降り、観客は夫婦の関係にただならぬ空気を感じるところから始まる。彼女は男性と思われる名前をアパートの一室に見つける。これは妻側の単なる不倫話なのか、ここでかつての恋人に再会する純愛物語なのか。今後の展開に観客が思いを巡らせる間に、17年前へと場面は切り替わる。

本作は、『愛と哀しみのボレロ』(81)の女優として知られるニコール・ガルシアの監督最新作。2016年カンヌ国際映画祭コンペティション部門でも上映され、高い評価を得た。『エディット・ピアフ 愛の讃歌』(07)でアカデミー主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤールが、愛することへの情熱を内に秘めながら、精神的に不安定なガブリエルを熱演している。

舞台は南仏の小さな村。若くて美しいガブリエルは、真実の愛と結婚に理想を求めるあまり、その言動を周囲に理解されず、家族にも厄介者として扱われていた。両親に決められ結婚したジョゼは、情の深いスペイン人労働者。「あなたを愛することは決してない」と宣言したガブリエルに対しても誠実に接していた。日本ではまだ無名だが、ジョゼを演じるアレックス・ブレンデミュールの抑えた演技にも惹きつけられる。物静かで多くを語らない役どころだが、眼差しの奥にはいつも妻に対する優しさがある。なぜガブリエルは、そんな夫に対して心を閉ざしているのか。なぜホセは、そんな妻に対して献身的でいられるのか。

ある日、ガブリエルはアルプスの療養施設で、同じく患者として滞在する魅力的な帰還兵アンドレと出会い交流していく。愛していない人と結婚し、結婚後に理想の人が現れたら自分はどうするだろうか、と想像する観客も少なくないのでは。アンドレと共に過ごす間、それまでの奇行が嘘かのようにガブリエルの表情は穏やかだ。演ずるコティヤールの七変化ぶりに目を奪われる。

アンドレを演じるのは、祖父は俳優モーリス・ガレル、両親とも映画監督という芸能一家に生まれながら、着実にキャリアを築いているルイ・ガレル。フランス映画祭2015で上映された『夜、アルベルティーヌ』(14)にも出演し、インパクトある役柄は記憶に新しい。アンドレの存在が、やがてガブリエルの人生に大きな影響を与えることになるため、二人が一緒に過ごすシーンは心に刻みながら見ていただきたい。

アンドレがピアノで演奏し、劇中、象徴的な曲として繰り返されるのがチャイコフスキー作曲『舟歌』だ。短調のもの悲しい旋律が、まるで彼女の行く先の分からぬ愛と不安な心を代弁しているかのように聞こえる。それだけでなく、波に流されても決して沈まぬ舟のように、彼女自身もまた深い愛に守られながら進んでいた舟なのだと、劇場を後にするときに気づかされる。人間誰しもが、たった一人で生きることは難しく、他者によって生かされているという事実。感動というよりも、感謝に近い感情で胸が熱くなった。

フランス映画祭では、6月24日(土)14時10分より上映。劇場公開は、2017年10月7日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで予定されている。ラストの予期せぬ展開を受けて、見返したくなる場面が沢山でてくるはず。まずは映画祭で、ガブリエルがたどり着く愛の真髄を見守っていただきたい。

(取材・文:小嶋彩葉)

『愛を綴る女』 Mal de pierres

監督:ニコール・ガルシア
出演:マリオン・コティヤール、ルイ・ガレル、アレックス・ブレンデミュール

2016年/フランス、ベルギー/フランス語、スペイン語/120分/DCP/スコープ/5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム

10/7(土)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

© (2016) Les Productions du Trésor – Studiocanal – France 3 Cinéma – Lunanime – Pauline’s Angel – My Unity Production

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