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レポート

【レポート】6/28『ヴィオレット』(原題)

2015.6.29

mainAMG_2220フランス映画祭3日目の6月28日(日)、有楽町朝日ホールにて『ヴィオレット』(原題)が上映された。本作は、1940年代から60年代にかけてのフランス文学界を背景に、実在の女性作家ヴィオレット・ルデュックの半生をきめ細やかに描いた作品。上映後には、『セラフィーヌの庭』(’08)でセザール賞最優秀作品賞に輝いた名匠マルタン・プロヴォ監督と、主演女優であり今年の映画祭の団長を務めるエマニュエル・ドゥヴォスさんが登壇し、熱気に包まれた会場から大きな拍手で迎えられた。

AMG_2233Sさっそく、東京フィルメックス・プログラミング・ディレクターの市山尚三さんが、フランス文学界におけるヴィオレット・ルデュックの位置づけと制作経緯について訊ねた。プロヴォ監督がそれまで作品を読んだことのなかったヴィオレット・ルデュックを意識したのは、『セラフィーヌの庭』を撮り終えた頃、女流画家セラフィーヌについて書かれたヴィオレットの文章を出版社の編集者に紹介されたことがきっかけとなったそうだ。その文章に感銘を受けて本作の制作を思い立ったという。フランス文学界におけるヴィオレット・ルデュックの存在は、60年代には比較的知られていたものの、その後、ほとんどの作品が書店に並ぶことのない忘れ去られた作家になってしまったとか。幸いにも、本作がきっかけでフランスでは再び注目を浴びるようになり、日本でも彼女の作品が書店に並ぶことを期待しているそうだ。

AMG_2189S監督がシナリオを書く前からキャスティングを決めていたというヴィオレット役のドゥヴォスさんもまた、この作品に出演するまではヴィオレット・ルデュックについて全く知らなかったそうだ。監督のオファーを女優として嬉しく思ったそうで、撮影にあたり監督から「顔を醜くしてもいいか」と訊かれると、「こういう役は女優にとって素晴らしいプレゼント」と応えたというドゥヴォスさん。

AMG_2230S続いて会場からの質問に移った。本作ではヴィオレットの家庭事情に比重が置かれているが、その点について質問が寄せられた。監督は、「父親にも母親にも存在を認めてもらえなかったという家族との葛藤は、ヴィオレットが生涯かかえた葛藤だった。(ヴィオレットの才能を見出した)ボーヴォワールは、ヴィオレットにとって父親代わりだったのではないだろうか」と説明。一方、ドゥヴォスさんは母親役のカトリーヌ・イジェルさんとの共演を「強烈な体験」と振り返り、母親と激しく言い争う場面では力をもらえたと明かしてくれた。また、「文学であれ何であれ、芸術を通じて自分が抱える苦悩を克服することほど美しいものはない」と続け、「ヴィオレット・ルデュックは文学界のゴッホだ」と感じたそうだ。「ぜひヴィオレットの作品を読んでみてください」と観客にアピールする一幕も。

IMG_0410S次にプロヴォ監督作品に特徴的な自然描写について話が及んだ。監督によると、セラフィーヌはシンプルに自然との関わりを持って生きた人物で、ヴィオレットもまた、自然との関係がシンプルで強力だったことがその文章からうかがえるとか。監督自身もセラフィーヌやヴィオレットのように自然の中で日々生活しているそうで、そうした生活環境がおのずから作品に現れているのではないかと分析した。

AMG_2266WSさらに、長回しのカットが多くて撮影の苦労はなかったかという質問にドゥヴォスさんは、「偉大な監督との仕事でそうしたことは問題になりません。長回しというのは役者にとって心地よいもの。そのシーンに完全に没入でき、細切れにされることなく勢いを以て演じることができます」と応じ、大女優らしい一面をのぞかせてくれた。

AMG_2245S本作を掘り下げようとするといつまでも話は尽きない様子だったが、時間切れとなりトークが終了。本作は、12月19日より岩波ホールほか順次全国公開が予定されている。ぜひ劇場で、ヴィオレット・ルデュックの小説に触れてみてはいかがだろうか。

(取材・文:海野由子、撮影:白畑留美)

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