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レポート

【レポート】6/27『ボヴァリー夫人とパン屋』

2015.6.28

AMG_1491Sフランス映画祭2日目の6月27日(土)、有楽町朝日ホールにて『ボヴァリー夫人とパン屋』が上映された。本作は、フランスの文豪ギュスターブ・フローベールの代表作「ボヴァリー夫人」を題材に絵本作家ポージー・シモンズが描いたグラフィックノベルを、アンヌ・フォンテーヌ監督が映画化した話題作。終映後に登壇したフォンテーヌ監督は、まず来日の喜びを語り、「(作品を)気に入っていただけたらいいのですが。気に入っていただけなかったのなら帰ります」と冗談を交えて挨拶し、朝早くから駆け付けた熱心な観客の笑いを誘った。

IMG_0131Sさっそく、司会を務める東京国際映画祭プログラミング・ディレクター矢田部吉彦さんが、主演のファブリス・ルキーニさんなくしては語れない作品だと評すると、長年ファブリスさんと親交のあるフォンテーヌ監督は、ファブリスさんとの出会いについて語ってくれた。監督がファブリスさんと最初に出会ったのは、監督が女優だった頃のこと。『P.R.O.F.S.』(‘85)という映画の撮影現場で共演した折、ファブリスさんから夕食に誘われ、監督はナンパに違いないと思ったそうだが、ナンパどころか、その夕食の席でファブリスさんは小説「ボヴァリー夫人」についてとうとうと語り、完全にボヴァリー夫人の虜だったという。監督は、ファブリスさんが自分の娘にボヴァリー夫人と同じ‘エマ’という名前をつけたほどの傾倒ぶりであることを明かすも、「文学好きの知的なパン屋、という他にはない役を演じられるのはファブリスさん以外に考えられない」とファブリスさんを大絶賛。

AMG_1479Sまた、ボヴァリー夫人を演じたジェマ・アータートンさんのキャスティングについては、彼女に出会ってわずか2秒で決めたとか。「ジェマさんの魅力には、女性も男性も、同性愛者であっても、そして犬さえも抗うことができない」と、監督が惚れ込んだキャスティングだったようだ。

AMG_1493Sコミカルでありながら官能的で、サスペンス色も見られる本作。この作品をジャンルとしてどのようにとらえるべきかという会場からの質問に対して、監督は「辛辣なコメディ」と応じた。さらに、「英国人である絵本作家ポージー・サイモンの持つアングロサクソン的な残酷さ、辛辣さが混じったユーモアが作品全体のトーンに影響している。また、エロティシズムも、例えばパンをこねるシーンに象徴されるように、直接的ではなく間接的に描かれている。主人公のパン屋は妄想によって物事を考え、直接的ではなく何かを介して間接的に物事を考えている」と、冷静な分析を付け加えた。

AMG_1515s続いて、原作であるフローベールの小説「ボヴァリー夫人」を監督自身はどのようにとらえたのかという話に及んだ。17歳の時に初めてこの小説を読んだという監督は、ボヴァリー夫人を「時空を超えた普遍的なヒロイン、モダンで21世紀のどこにでもいるような女性」、そしてあえて定義するなら「リンゴの樹の下に立っていて梨を欲しがるような女性」と表現。小説「ボヴァリー夫人」は、フランスでは学校の課題として読まれる文学的リファレンスとしては有名な図書で、監督は「(著者が)男性でありながら女性心理を細やかに描写する手法が素晴らしいと感じた」という。そして、「ボヴァリー夫人のように誰しも、現実よりも何かもっと強烈で面白いものを期待する気持ちを抱いているもの。誰もがボヴァリー夫人という人物に自己投影できるのではないでしょうか」と独自の解釈を観客に投げかけた。

AMG_1532Sときにユーモアを交えながら理性的な語り口で観客の興味をかきたてたフォンテーヌ監督。最後に観客から大きな拍手が寄せられ、トークが終了。本作は、7月11日よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショーが決定している。ぜひ劇場で現代版ボヴァリー夫人の魅力を堪能していただきたい。

(取材・文:海野由子、撮影:白畑留美)

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