―監督に質問です。今回、ピエール・ボナールを題材にした理由を教えてください。
監督:この作品はボナールに焦点をあてたというよりも、”ボナールとマルト”という二人の物語なんです。彼らがどんな風に2人の生活を送ってきたか。 1人の画家とそのミューズである彼女が、どんな人生を送ってきたかを描いています。
―ヴァンサン・マケーニュさんは本作に出演されていかがでしたか?
ヴァンサン・マケーニュ:撮影も本当にとても上手くいきました。出演できて、心から誇りに思っています。シナリオを読んだ時に既にすごく感動したんですけれども、出来上がった作品を見てみて、 シナリオに描写されていた秘密めいたものがきちんと映画にも表現されてるなと思いました。
―横浜の印象はいかがでしょうか?
監督:ホテルにずっといるからあんまり出歩けていないんだけれどもね(笑)本公開も控えていてその宣伝もあるので、仕事第一なんです。ただ、幸いなことに、初日に鎌倉に行って、小津監督のお墓参りができました。また、昨日は三渓園を訪れて、お茶をたててもらいました。とても美しかったです!
―ヴァンサン・マケーニュさんはいかがですか?
ヴァンサン・マケーニュ:(日本語で)ボク ハ トーキョー!夜の東京を楽しんできたよ(笑)
監督:僕は昼間の横浜を、彼は夜の東京を楽しんでいるよ!(笑)
―フランス映画をはじめてみる方にお勧めのフランス映画を教えてください。
ヴァンサン・マケーニュ:僕自身は16歳の時にみたイングマール・ベルイマン監督『叫びとささやき』というスウェーデン映画に圧倒されたんだ。その後、フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』をテレビでみた時に、凄い!これが映画か!と感動して、同時に割とフランスのコメディがテレビでも流れていたのでそれも沢山みていたんだ。
監督:私は、クロード・ソーテ監督の『すぎ去りし日の…』。私はヴァンサン・マケーニュよりも20歳くらい年上だから、私の時代はテレビで映画をみるという習慣はなかったんだ。
ヴァンサン・マケーニュ:僕はテレビの世代だけれども、今のようなプラットフォームはなかったから、数少ないテレビ番組から発見していたんだ。若者向けに白黒映画を放送していて、それはしっかりみていたんだよね。
―最後にこの作品の公開を楽しみにしている観客の皆さんにメッセージをお願いします。
監督:ボナールの話をさせていただくと、実はボナールも日本にすごく影響されていて、ボナールのことを”ジャボナール”というぐらいのあだ名がついてるほど、日本の絵画に心酔していたんだ。それは彼らだけではなくて、あの当時のパリの画壇っていうのは、もう日本の絵画にすごく影響されていた。ジャパニズムがありますよね。 ボナールはナビ派ですけども、印象派同様、すごく日本とのゆかりがあって、エクス・アン・プロヴァンスの美術館でこの5月から大々的に”ボナールと日本”という展覧会があるんですよ。
ヴァンサン・マケーニュ:この作品は本当に”夫婦の物語”を描いていると思う。そこに観客は感動してもらえるんじゃないかなと思うんです。 “夫婦”といっても、本作では、この人と一緒に生きていくと決めて―でもその間にも、裏切りがあったりしても、それを許すということを望み、最後まで添い遂げる―そういう2人の姿が描かれています。それを僕自身、観客としてみた時に感動したんです。現代であれば、あまり好きではなくなったとか、他の人を好きになったら別れたりするけれど、彼らは最後まで”許しとともに添い遂げた”というところが本当に美しいと思うし、この作品はその人生をいろんな時代を通して描いた映画になっているんです。僕自身もそういう映画が好きですし、すごく感動もある、とても力強い作品になっていると思うので、皆さんにも楽しんでもらいたいと思います。
監督:マルタン・プロヴォ
キャスト:セシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・マケーニュ、ステイシー・マーティン、アヌーク・グランベ
2023-Les Films du Kiosque-France 3 Cinéma-Umedia-Volapuk