エリーズ・ジラール監督(左)、伊原剛志さん(右)

―日本で撮影したきっかけを教えてください。
 
監督:2013年に初めて来日した時の日本の印象が本当に強烈だったんです。すぐに日本に”恋に落ちた”という感じでした。 日本に漂う「静寂」の雰囲気にすごく惹きつけられました。
そして、日本の文化の中には、幽霊や亡霊がたくさん存在する。私が知ってる日本の古典映画の中にも幽霊がたくさん出てきますが、それはやっぱりこのサイレントな空気感があるからこそ”幽霊”というものが出現できるんじゃないかなと思ってるんです。
 
―伊原さんは、イザベル・ユペールさんとの共演はいかがでしたでしょうか。
 
伊原:イザベル・ユペールはもともと僕も好きでしたし尊敬していたので、非常に貴重な経験でした。今回はフランス語での共演で。最初に本読みをした時、僕は自分のセリフは言えるようになってたんです。ただ、その日は説明から何から監督も含めて全員がフランス語で、日本語は誰も使わない状況だったので追いついていくのに必死でした(笑)台本もフランス語で、自分のセリフ以外のところはそんなに追えないので、最初の方は凄く緊張感がありました。
そんな中今でもすごく覚えてるのは、最初の撮影の時、椅子に座っていたらイザベルが僕にフランス語で話しかけてきたんです。「フランス語できないんですよ」って英語で返したら驚いて「あんなにフランス語のセリフを喋っていて、どうやって覚えたの?私が逆の立場で日本語を喋るなんてできない、すごいわね!」って言ってくれて、ちょっと気持ちが落ち着きましたね(笑)

 
―フランス語はどうやって習得されたのでしょうか。
 
伊原:僕の先生はエリーズ監督でした。skypeでつないで最後の仕上げをやってくれて。いつも優しくて、冗談を言ってくれて、笑ったりしながらやっていました。
監督:本当に素晴らしかったです。 フランス語も完璧です!
伊原:ハハハ(笑)フランスで公開されて、この俳優はフランス語が喋れるんだって思われると、また大変だな(笑)もちろんもし話が来たら受けますけど!
監督:実は映画の中で伊原さんが話しているセリフは、とっても文学的でハイレベルなフランス語なんです!

 
―横浜の印象はいかがでしょうか。
 
監督:とってもダイナミズムに溢れた街ですね。とっても親切だし、すごくおもてなしの精神に溢れた街だなと思います。
伊原:横浜はよくロケや撮影でもきますし、いろんな文化が集まっていて好きですよ!ちょっと神戸とも似てますね。潮の香りとかも好きなので。
昔は、このみなとみらいができる前に、撮影で来てたんです。その時はバイオレンスもので!だからこの辺りでは何人も人を殺すシーンを撮影してきました(笑)

 
―最後にこの作品の公開を楽しみにしている観客のみなさんにメッセージをお願いします。
 
監督:これは”フランスの女性と日本の男性のラブストーリー”です。そして、日本の1番美しい場所で撮影しています!そういう”美しい場所”で”美しい愛の物語”が語られる作品なので、ぜひご覧ください。イザベル・ユペールと伊原剛志という2大大物俳優が出演していますから!
伊原:僕はこの役者という仕事において、違う人間を演じることを非常に楽しんでいるんです。特に今回は本当に初めて、僕の体から「フランス語」が出ていて今まで全く演じたことのない人物を演じてるので、やっぱりそれをみなさんにも楽しんでほしいと思っています。
実は、毎回そうなんですけど、僕は自分の出演した作品を客観的にみられないから、その映画に対して”面白い”とかどう思うっていうのはいつもないんです。それを感じるのはお客さんだと思うので。だから、今回こうしてフランス語を僕が喋ってるのがいいのか悪いのかさえわからない(笑)
お客さんにどう受けとめていただけるのかっていうのは、非常にちょっと緊張してるんですよ。映画はまだスクリーンでみられていないので、やっぱり大きなスクリーンでみたいです。実は、この横浜フランス映画祭ではじめて大きなスクリーンでみられるので、やっぱり少し緊張してドキドキしています。
監督:こんなにフランス語を完璧に話す俳優は他にいません!(笑)とても貴重だと思います。
伊原:(笑)実は耳がいいんです!実は、今ピアノも習っていてそれも耳で覚えているんです。
監督:では次回は、フランス語話してピアノを演奏する役で出演してください!
伊原:声をかけてくれるなら喜んで苦労します…(笑)でも非常に撮影が楽しかったんです。凄く良いスタッフで良いチームで、穏やかに撮影できました。
監督:実は他の国での上映時、結構反応がいいんです!他の国と同様に、日本でもこの映画が愛されるといいなと思ってます

日本のシドニー(仮題)』 Sidonie au Japon

監督:エリーズ・ジラール
キャスト:イザベル・ユペール、伊原剛志、アウグスト・ディール
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