実施日:2024年3月24日(日)19:30~
登壇者:オリヴィエ・デルボスク(プロデューサー)
開催場所:横浜ブルク13
 
カネと血

ダニエラ・エルストナー(ユニフランス代表)
Q&A前に、ユニフランス代表のダニエラ・エルストナーが登壇。「素晴らしい5日間を過ごしました」と観客に挨拶。来日した監督、俳優、プロデューサーたちが日本を去るのが寂しいと言っていると話し、「映画祭の開催にはいろいろな力が必要です」と話し、映画祭に関わったボランティアを含むすべてのスタッフに感謝。「来年もお目にかかるのを楽しみにしています!」と力を込め、大きな拍手を浴びた。
 
Q&Aに登場したプロデューサーのオリヴィエ・デルボスクはグザヴィエ・ジャノリ監督の来日が叶わなかったことをお詫び。「手術を受けたため、来日できなかったことを監督自身もとても残念に思っています。12話のテレビシリーズのうち、最初の2話を観ていただきました。日本のみなさんに観てもらえるのを誇らしく思うと言っていました」とジャノリ監督からのメッセージを観客に伝えた。
 
カネと血
オリヴィエ・デルボスク(プロデューサー)
ジャノリ監督は前作『幻滅』(21)で一旦映画作りをストップ。『カネと血』で初めてTVシリーズを手掛けた。実話を元にした物語をTVシリーズでと決めた経緯について「監督の友人でジャーナリストのファブリス・アルフィが数年にわたりある事件を取材していました。その集大成として出版した本がドラマの原作になった『カネと血』。本に書かれている詐欺事件はフランスで大きなスキャンダルになりました。10時間の長いシリーズで撮ったら面白いだろうね、という流れで企画がスタートしました」と説明。本作にはジャノリ監督がいつも取り上げている汚職、金がいかに人を変えていくのか、環境、愛、暴力、情熱などすべてテーマが入っていた。しかし、最初からTVシリーズでと決めていたわけでもないそうで「いつも映画制作をしているチームと一緒に、10時間の長編を撮るという形で撮影しました」と制作体制を明かした。
 
映画祭で最初の2話のみが上映された。上映後には早速「続きが観たい!」という声があがり、観客の反応は上々。日本での放送はまだ決まっていないそうで「SNSなどで“続きが観たい!”と書き込んでください。日本の放送局に買ってもらって、みなさんに観ていただければと思っています」と協力を仰ぎ、「最初の2話を観て残りの10話を観られないのはかなりのフラストレーションのはず。本当は全部観せたいけれど…」と残念がながらも、「残りの10話にはハチャメチャな展開が待っています!」と笑顔で観客の期待を煽っていた。
 
本作で描かれている詐欺事件はフランスでは広く知られている。「国が地球を救うためのアイデアとして考えたシステムですが、お金がたくさん動くということで人の心を歪めてしまった。汚職そして事件に結びついてしまったのはとても悲しいこと。支払うべき消費税を支払わないという詐欺で、盗まれた数億ユーロは戻ってきていません」と事件の詳細を解説した。
 
ヴァンサン・ランドンのキャスティング理由については「実直で公明正大な人。詐欺や汚職など悪に対する正義感の強い人のイメージに合っていたから」だとし、「彼は俳優界のボス的存在。すごい俳優です」とフランスの名優の出演に満面の笑みを浮かべる。脚本の段階でキャスティングされていたのはランドンだけ。ニールス・シュナイダー、ラムジー・ベディア、ジュディット・シュムラはオーディションで出演が決まった。ベディアについては「コメディ作品にたくさん出ている人。この作品のようなシリアスなものをやれることを監督が見せたかったようです。最初の2話ではおしゃべりで軽い感じだけど、だんだん悪の世界、暗い世界にのめり込んでいくのをうまく演じています」と、ここでも3話以降の展開が気になるコメントで観客の期待を煽っていた。
 
作中に登場する税関捜査官については「フランスでは税関捜査官は表に出てきません。TVシリーズで税関関係の捜査をする人の話は、初めて取り上げられています」と本作が珍しい職業にフィーチャーしていることも教えてくれた。さらに「実際の事件でも、詐欺の犯人は税関の捜査によって逮捕され、今は刑務所に入っています」と本作で描かれる“リアル”な部分にも触れる。ネタバレしない程度に今後の展開を教えてというリクエストにデルボスクは「前半の6話で“カネ(金)”、後半の6話で“血”を描いています。ヴァンサン・ランドンが演じる役が事件を追って行き、かなりの金の被害があったことを突き止めます。後半の“血”では、仲間同士の復讐合戦が繰り広げられます」と本作の構成を語った。
 
フランスでは前半6話を放送した2ヶ月後に後半6話を放送。「“続きを早く観たい!”という声がたくさんありました。TVシリーズは大成功。Canal+(カナルプリュス)始まって以来の視聴率で2700万人が観たそうです」とニッコリ。初めてのTVシリーズをジャノリ監督はとても満足しているそうで「いつもは映画なので2時間ほどかけて描くところを、10時間かけて人物をじっくり見せていくことができる。それがうれしかったようです」と気持ちを汲み取っていた。Q&Aで指名された観客の全員が「早く続きが観たい」という感想を添えていたことを踏まえ、「この後すぐに監督に電話をしてみなさんの反応を伝えます。ぜひ、日本で放送できるようにご協力を!」と呼びかけると、会場は“放送への期待”を込めた熱い拍手に包まれた。
 
カネと血