イヌとイタリア人、お断り!』上映後Q&Aレポート
上映日:2022年12月3日(土)15:00~
ゲスト:マチュー・クートワ(プロデューサー)
開催場所: kino cinema横浜みなとみらい
MC:佐藤久理子
通訳:高野勢子
 
「フランス映画祭2022横浜」が開催中のkino cinema横浜みなとみらいにて12月3日、ストップモーション・アニメーション映画『イヌとイタリア人、お断り!』が上映されました。上映後には、共同プロデューサーのマチュー・クートワが舞台挨拶・観客とのQ&Aに参加しました。
イヌとイタリア人、お断り!
 
本作はアラン・ウゲット監督が、シナリオ執筆から完成までに9年間の歳月を費やした力作。イタリア北部からアルプスの山々を超えて、フランスで新しい生活を始め、彼が愛した家族の運命を変えたルイジ・ウゲット。その半生を孫が振り返るという物語です。
 
企画に参加した理由について「ある家族の物語であると同時に、移民の歴史を雄弁に語っています。戦争や飢えといった生命の危険を感じ、隣国に逃げなければいけなかったのは、当時のイタリア人だけではありません」と物語の普遍性を挙げ、「それにユーモアも散りばめられている」と魅力を語りました。
 
タイトルになっている「イヌとイタリア人、お断り!」という看板掲示については、「残念ながら、実際に存在していました」と語り、「当時の人種差別を表しているのはもちろん、現在もさまざまな人種に対し、同じことが繰り返されている。そんなショッキングな事実をタイトルにすることで、より多くの人たちに映画を見ていただくことが重要だと思いました」と題名にこめたメッセージを語りました。
 
上映時間は70分。1秒の映像を作るのに、12枚の写真撮影が必要という、気の遠くなるような作業について「確かに大変な道のりですが、不安はありませんでした。ストップモーション・アニメーションは本当に美しいテクニックだと思います」。同じ顔をした人形が多数使用されており、観客から「まさか経費削減ですか?」と質問が飛ぶと、「そのまさかです!」と照れ笑い。「アランのアイデアです。同じ顔の人形に、ひげや髪型を加えることで違いを出した」のだとか。野菜のブロッコリーで、樹木を表現するアイデアも「アランだよ。ユニークなアイデアは全部アランなんだ」と笑顔で語り、「そんなアーティストの強いこだわりに寄り添うのが、プロデューサーの役割なのです」と話していました。
イヌとイタリア人、お断り!
 
フランスのアニメーション事情に話題が及ぶと「過小評価されていると思います」と即答し、「アニメーションの歴史は、実写よりも長いです。日本のアニメのように、大人の観客にも見てほしいですし、最近では『FLEE フリー』のような作品も生まれて、日本で紹介されていますね。評価も高まっていると思います」とコメント。近年、ハリウッドが、フランスのアニメ人材をスカウトするケースも増えているそうで、「“フレンチ・タッチ”がトレンドみたいです」とこぼれ話も飛び出した。