6/24(日)『See You Up There(英題)』上映後Q&Aレポート

See You Up There

6/24(日)『See You Up There(英題)』上映後Q&Aレポート

ゲスト:アルベール・デュポンテル(監督)
モデレーター:佐藤久理子

セザール賞12部門にノミネートされ、監督賞、撮影賞、脚本賞、衣装デザイン賞、舞台美術賞と5冠を獲得し、フランスで200万人を動員した大ヒット作『See You Up There(英題)』がフランス映画祭 2018で上映された。上映後に登壇したのは、俳優としても有名なアルベール・デュポンテル監督。かねて来日が待望されていたこともあり、会場は満席のファンで盛り上がった。

原作はゴンクール賞を受賞した有名な小説です。どうしてこの作品を映画化しようと思われたのでしょうか。また、どんな点に特に惹かれましたか?

原作小説は現代を反映していると思ったからです。100年前のヨーロッパでは、主人公のアルベールのような弱い人々が社会の犠牲者になっていましたが、それは今の時代も変わりありません。

原作者のピエール・ルメートル氏とはお知り合いだったのでしょうか?読者としてファンだったのか、それとも誰かから推薦されて知ったのでしょうか。

実は、ルメートルさんとはエージェントが同じだったんです。たまたま、エージェントの人から原作の出版前に、面白いからぜひ読んでみて、と紹介されたのです。確かに素晴らしい小説だと思いました。ただ、私も別の仕事があり、すぐには映画化に取りかかれませんでした。少し経ってから、本作のプロデューサーからも映画化を勧められて、ルメートルさんと会ってみようということになったのです。そこで、もし私が映画化するとしたら「今の世の中とリンクした作品として作りたい」とお話したら、そのアイディアを気に入ってくださったのです。

原作は歴史小説のようで、そうともいえない、あらゆることが詰め込まれた宝箱のような作品だと思います。しかしながら、この大著を映画という限られた時間におさめる上での苦労はあったのではないでしょうか?

ルメートルさんの原作はビジュアルのイメージが豊かな作品でしたので、実は脚本を作るのはそれほど大変な作業ではありませんでした。遅筆の私にしては珍しく3週間で初稿を書き上げたほどです。映画化するにあたって一番重視したのは、エドゥアール・ペリクールのキャラクター造形です。彼はまさに私が理想とするようなアーティストですね。まるでダダイストのアーティストのような。かねて私が「こうなりたい」という要素を持ち合わせています。人間的でありながらデッサンを書かせると天才的で、ラジカルな生き方を追求しています。彼が本作の映画化の鍵でした。

監督のフランス映画祭での来日はずっと待望されていました。

実は日本に来るのは今回が初めてなのです。周囲から「きっと日本の文化には衝撃を受けると思うよ」と言われていましたが、想像以上に素晴らしいです。

原作は3部作なのですが、2作目を映画化する予定はおありですか?

今のところ、ありません。私は自分の監督作品の準備がありますからね。

原作とラストシーンが異なっていますね。これは監督のアイディアですか?

そうです。原作はエドゥアールが悲惨な死を遂げます。ただ、あれはルメートルさんが、いわゆる駅売小説(通俗小説)にありがちな予定調和のハッピーエンドを拒否したためだと思います。私は映画にするなら違う形が良いと思っていました。エドゥアールがずっと敵対していた父親と再開するシーンが必要であると考えていたのです。この変更はルメートルさんにもお話しました。彼は「映画は小説とは別のものなのだから、君の好きにすればいいよ」と言ってくださいました。

美術がとにかく素晴らしかったです。祝祭性があります。特に後半の部屋でダンスをするシーンが印象的でしたが、あのアイディアはどこから?

まず前提として、映画は2時間の大いなる嘘だと思ってください(笑)カメラから10m以上離れたところは、もうすでにイリュージョンです。撮影でモロッコにも行きましたが、うまくいかず、最終的にスタジオの駐車場で撮影したりもしています。
パーティのシーンは原作にはありませんでした。ですが、私はエドゥアールたちが戦争の責任者を糾弾するシーンをどこかに入れたかったのです。戦争は常に弱者に犠牲を強います。また、多くの企業家たちは甘い蜜を吸いました。エドゥアールの父親もそれに含まれます。常々疑問なのですが、フランス人はよく平和を口にするけれど、なぜ、ストリートに将軍の名前をつけなければならないのでしょうか。栄光の象徴として知られる有名な凱旋門にしても、あれに刻まれた名前はすべて軍人や戦争を起こした人々です。エドゥアールはそういった社会の矛盾を糾弾し、暴露するキャラクターなのです。もしかしたら、別の映画監督が監督したら全く違う映画になっていたかもしれません。でも、私はそういう要素をいれたかったので、エドゥアールをメインで取り上げたのです。

『BPM ビート・パー・ミニット』でも好演していたナウエル・ペレーズ・ビスカヤートをはじめ、俳優たちが本当に素晴らしい演技をしています。彼らを起用した理由は?

ナウエルを発見したことは本作にとって重要な出来事でした。彼はアルゼンチンの出身で全く知らなかったのですが、目力と身体能力が素晴らしく、ダンスの才能もありました。エドゥアール役は彼以外には考えられませんでした。本作の後、彼は『BPM』にも出演しました。

悪役の上官プラデルには、単なる強面の意地悪さだけではない、喜劇的な要素が必要でしたので、ロラン・ラフィットを起用しました。ご存知のようにコメディ・フランセーズに所属していますし、怪物的で複雑な悪役像を体現してくれました。ちなみに、女性を舌で舐めるというアイディアは彼からです。後日、私にメールで「本当のぼくはあんなことはしないからね」と念を押されました(笑)
エドゥアールの父親には、ニエル・アレストリュブを起用しました。この役に必要な冷徹さ、厳しさ、それでいて繊細な感受性を持ちあわせています。最後の父と子の再開の場面では、本当に感情を込めて全力で演じてもらい、たった2テイクしかできないくらいの力の入れようでした。でも、その2テイクで納得のいく演技をしてくれました。

美術もそうですが、衣装にも相当こだわりがありそうですね。

衣装は実際にあるものを参考にしました。最後にエドゥアールが着ている衣装はジャン・コクトーが着ていた服をモデルにしました。同様に、アルベールが初めてエドゥアール家を訪れるときの道化じみた衣装はバスター・キートンを参考に。また、エドゥアールの父親はヴィクトル・ユゴーを。また、プラデルは出演するシーンごとに衣装を変えました。狙いが当たったのか、この作品はセザール賞で衣装デザイン賞を受賞しています。

See You Up There(英題)』は、2019年公開予定

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☆本映画祭で初めて、監督ご本人が前説を行いました!

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