6/24(日)『CUSTODY/カストディ』上映後Q&Aレポート

CUSTODY/カストディ

6/24(日)『CUSTODY/カストディ』上映後Q&Aレポート

ゲスト:グザヴィエ・ルグラン(監督)
モデレーター:矢田部吉彦

子どもの「親権」をテーマに、壊れた夫婦間の関係が緊張感たっぷりに描かれるサスペンス的人間ドラマ。ベネチア国際映画祭では最優秀監督賞に輝いたグザヴィエ・ルグラン監督の初の長編監督作がフランス映画祭 2018にて上映された。上映後、ルグラン監督が登壇し、観客とのQ&Aを行なった。

この恐ろしくも素晴らしい作品を日本に持ってきてくださって、ありがとうございます。またベネチアでの受賞、本当におめでとうございます。

日本のみなさんにお会いできて幸せです。ベネチアでの受賞には大変感激しました。何と言っても本作は私にとって初めての長編ですから、それを公式コンペティションに入れて頂いただけでも嬉しいのに、新人賞、そして最優秀監督賞も頂いて感激です。

本作を着想したそもそものきっかけは何だったのでしょうか?

私はもともと舞台をやっていました。それもあって、古典の悲劇を現代に置き換えて作劇をしたいと思っていたのです。例えば、復讐であるとか愛、死といった普遍的なテーマです。そこで、まずは3年くらいの間、同じようなテーマを扱った映画を数多く観ました。特に多く観たのは、80年代のアメリカ映画ですね。ジュリア・ロバーツが出演していた『愛がこわれるとき』(1990)もそうですが、この頃の作品には夫婦間の暴力を扱った映画がたくさんあると思います。家族がテーマというよりは、夫婦間の関係を描いたものです。夫婦の話にしようと決めたのち、実際にそうした問題に直面した方々にも数多く会いました。みなさん、一見普通の夫婦に見える方も多かったのが印象的でした。

大変衝撃的な内容です。アメリカ映画によく出てくるサイコパスな夫よりも、よりリアルに感じられる恐ろしさがありました。また、映像美が印象的です。例えば、妊娠検査薬を使うシーンで使われたゆっくりとしたズームイン、そしてクライマックスでの母と娘のやりとりなどといった映像へのこだわりを伺わせてください。

いまお話されたシーンはすべて私の映像へのこだわりによるものです。なぜ、そこまでこだわるかというと、同じようなシチュエーションで犠牲になった女性から様々な話を伺ったからです。彼女たちは毎日、夫が仕事から帰ってきた時に、「どうしたらいいんだろう」と恐怖に慄いていたと語っていました。それなのに、そうした事態につながる夫の面会の機会をあっさりと判事が決めてしまいます。ですから、こうした被害者の状況を観客のみなさんに理解してもらわなくてはならないと思いました。それには、いちいち説明をするのではなく、観客のみなさんにその場所にいるような感覚を持って欲しいと思ったのです。暗闇のシーンでも、自分が同じように暗闇の中にいるような感覚を持って欲しいと思っていました。
また、音についても同じことがいえます。先ほどお話した過去の映画を観ていて、結局、よく理解できないことが多くありました。というのも、音楽など様々な要素を詰め込みすぎていて、集中できないんです。かねてから自分の映画では静かな環境の中で耳を澄ますように、感覚を鋭敏にして感じて欲しいと思っていました。

エンディングのスタッフロールは、最後までずっと無音のままでしたね。そうした演出にも、やはり監督の意図がおありでしょうか?

はい。本作のエンディングはあのようにしたかったのです。それは暴力に取り込まれた犠牲者は、何も見えなくなってしまう、あるいは聞けなくなってしまうからです。慣例的に音楽を流してしまったら、全く違う映画になってしまいます。

暴力の源となっているドゥニ・メノーシェ演じる父親は、ものすごい存在感がありますね。彼を起用した理由はどんなものでしたか?

最初から彼を父親役にと考えておりました。本作の1年前にひと組の夫婦の別れを描いた短編を作っていたのですが、そこでも彼を起用していたのです。彼と撮影前にディスカッションしたのは、こういった暴力をふるう男性の心持ちについてです。どうして暴力に訴えてしまうのか?他の選択肢はなかったのか?などについて話し合いました。幼少期のトラウマによるものなのか、他人への異常な執着心からなのか、あるいは精神的に幼いのか、などです。ある意味では、彼自身も犠牲者なのだろうと思いました。自分の思いとは逆のことをしてしまう、暴力性をコントロールできないといった部分です。ドゥニにはその点をコントロールして演じてもらえるのではと思いました。

本作の舞台はどこで撮られたのでしょうか?

フランシュ・コンテ地方です。理由はかつてのフランスの香りが残っている地域だからです。私はフランスといえば、すぐにパリ、というような映画は作りたくありませんでした。実際に地方で撮影することによって、財政的な援助も受けられたということがありました。

最後に一言お願いします。

いつも海外の映画祭だと、質問してくださるのは女性が多かったのですが、今日は男性のお客さんが多く、質問も男性からが多かったのが面白かったです(笑)

CUSTODY/カストディ(英題)』は2019年1月に全国順次公開予定

CUSTODY/カストディ

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