レポート

【レビュー】『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』

07_UN+UNE_1_main_catch映画音楽作曲家のアントワーヌは、ボリウッド版「ロミオとジュリエット」作品の制作のためにインドを訪れ、フランス大使の妻アンナと出会う。愛する夫との間に子供を授かりたいと願うアンナは、伝説の聖者アンマに会うために巡礼の旅に出るが、アントワーヌも休養を求め、アンナを追って旅に出る。わずか2日間の列車旅行であるが、ロミオとジュリエットのような若い男女の恋愛とはまるで対照的な大人の恋が、インドの生命力溢れる美しい風景の中で描かれる。

「愛はこの映画の唯一のテーマだ。愛に限界はない」と語るのは、本作の監督で、『男と女』(66)『愛と哀しみのボレロ』(81)などを手がけたフランスの巨匠クロード・ルルーシュ監督。主役のアントワーヌを演じるのは、『アーティスト』(11)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたジャン・デュジャルダン。仕事で名声を手に入れるも、自分のことにしか興味がなく、女性をよく裏切るという自覚をもち、結婚を迫られると躊躇してしまう…こんな少し自由すぎる男に、なぜか女は惹かれるもの。誰もが羨む幸せな生活を送っていたが、アントワーヌによって心の扉が開かれていくアンナを演じるのは、フランスの人気女優エルザ・ジルベルスタイン。

本作の魅力の一つが、フランス映画のエスプリが詰まった会話。2人が次第に惹かれあう気持ちとユーモアあふれるテンポの良い会話が心地よくシンクロし、ロードムービーをリズミカルに彩っている。また、インドという舞台が、2人の愛をより純粋で神聖なものに演出している。異国情緒豊かな街並み。ガンジス河で沐浴する大勢の人々。これまで3400万人以上の人々を抱きしめ元気づけているという実在の人物・聖者アンマを訪れ、抱擁を交わすシーンでは、スクリーンを通しても人々の信仰の深さとアンマの温かなエネルギーが溢れ、作品全体にノンフィクションのような説得力を生んだ。本作でもリアルな男女を描くことに、名匠ルルーシュ監督の手腕が惜しみなく発揮されている。07_UN+UNE_2_sub1

秘密の2人旅かと思いきや、旅の途中に何度もパートナーへ電話で経過報告するというオープンさ。パートナーへの愛は偽りがないにも関わらず、同時進行するもう一つの愛。恋の駆け引きをする年齢を超えた男女は、こんなにも正直に行動し、気持ちを伝えてしまうものなのかと、見ている方はドキドキしてしまう。あなたがアンナなら、アントワーヌなら、この恋の終着駅をどこにするか。2人の恋の選択をぜひ劇場で見守っていただきたい。

(文・小嶋彩葉)

 

『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』 Un + Une

監督:クロード・ルルーシュ
出演:ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポル

2015年/フランス/フランス語・英語/114分/DCP/1.33/5.1ch
配給:ファントム・フィルム

2016年9月3日(土)~Bunkamuraル・シネマほかにて公開

©2015 Les Films 13 – Davis Films – JD Prod – France 2 Cinéma

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