レポート

【レビュー】6/26 『ショコラ!(仮題)』

フランス映画祭3日目の6月26日(日)、有楽町朝日ホールにて『ショコラ!(仮題)』が上映された。上映前には、映画祭を主催するユニフランスのジャン=ポール・サロメ会長より、来日が叶わなかったオマール・シィさんから観客の皆さんに向けた、次のようなショートメッセージが紹介された。短いながらも茶目っ気のあるメッセージに、観客から笑みがこぼれた。

08_CHOCOLAT_5_Omar Sy_s「みなさま、こんばんは。『ショコラ!』という私にとってとても大切な映画をご紹介するのに、皆さまとご一緒できないのが本当に残念です。それでも、皆さまに、上映をお楽しみくださいという言葉をどうしても申し上げたかったのです。皆さまに笑顔で、『(日本語で)お楽しみください!』と申し上げます… これできちんと通じているといいのですが… それでは、またお会いしましょう。『(日本語で)さようなら』」

 

今回は、残念ながらロシュディ・ゼム監督及びオマール・シィさんの来日がキャンセルとなったため、トークショーレポートに代わり、作品レビューをお届けしたい。

08_CHOCOLAT_2_sub_1_s1897年、フランス北部。片田舎の小さなサーカスで、落ちぶれた道化師のフティットは、のちにショコラの愛称で親しまれるひとりの黒人と出会う。この出会いが、道化の世界に革新をもたらし、パリの人々を熱狂させることになろうとは、誰が予想できただろうか。

本作は、フランス初の黒人芸人ショコラの半生を描いた実話である。メガホンを取ったのは、『あるいは裏切りという名の犬』(04)をはじめとする多数の作品に出演し、俳優としても活躍するロシュディ・ゼム監督。

本作の魅力は、何と言っても道化師コンビの関係性にある。奴隷の生活から逃げ出して道化師として生きる黒人のショコラを演じるのは、大ヒット作『最強のふたり』(12)(フランス映画祭2012にて上映)でセザール賞最優秀主演男優賞を受賞したオマール・シィ。ストイックなまでの道化師魂でショコラを支え続けた白人のフティットを演じるのは、チャールズ・チャップリンの実孫であり、自らショーを主宰しサーカスの世界に精通しているジェームズ・ティエレ。

08_CHOCOLAT_3_sub2_s肌の色も、性格も、アーティストとしての方向性も相反する2人は、まるで化学反応を起こすかのように、ホワイトフェイス・クラウン(知性派)とオーギュスト・クラウン(おとぼけ役)というパフォーマンスで、サーカスに新しい風を吹き込んでいくのだが、オマール・シィとジェームズ・ティエレが緻密に練り上げた人物キャラクターと繊細な演技が際立つ。しかし、名声を手にしてもなお、ショコラの前に立ちはだかったのが人種偏見の壁であったという事実は切なく、どこか憂いを帯びた道化師の表情と重なる。

ロシュディ・ゼム監督も、オマール・シィも、ジェームズ・ティエレも、本作に関わる以前に、ショコラの存在を知らなかったという。かつて一世を風靡した黒人の道化師ショコラが、なぜ人々の記憶から消え去ってしまったのであろうか。本作は、その問いの答えを導き出すための物語でもあるようだ。

なお、本作は2017年、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショーが決定している。フティットとショコラが誘う道化の世界に、ぜひ足を運んでいただきたい。

(取材・文:海野由子)

 

『ショコラ!(仮題)』 Chocolat

監督:ロシュディ・ゼム
出演:オマール・シィ、ジェームス・ティエレ、クロティルド・エスム

2015年/フランス/フランス語/119分/DCP/1.85/ドルビーSR
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES

2017年公開予定

Photographe Julian Torres © 2015 Mandarin Cinéma – Gaumont

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