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レポート

【レポート】6/28『アクトレス〜女たちの舞台〜』

2015.6.29

AMG_1878S「フランス映画祭2015」開催3日目の 6月28日(日)、有楽町朝日ホールで『アクトレス ~女たちの舞台~』(原題:シルス・マリア)が上映され、上映終了後にオリヴィエ・アサイヤス監督が登壇してトークショーが行われた。観客から大きな拍手で迎えられたアサイヤス監督は、「日本の方々には私の作品を愛していただき、友人もたくさんいる。日本で新作が公開されるときはできるだけ来ようと努力してきました。今回もこうして呼んでいただけて嬉しい」と挨拶。会場からの質問に、丁寧に答えてくれた。

AMG_1930S1970~80年代に活動したテロリストを描いた『カルロス』(10)や、1968年の五月革命後の世代を描いた青春映画『5月の後』(12・日本未公開、第25回東京国際映画祭で上映)など、近年のアサイヤス監督作品はバラエティに富む。まず、司会を務める東京国際映画祭プログラミング・ディレクター矢田部吉彦さんが、今回新たに女性性について切り込んだ『アクトレス ~女たちの舞台~』(原題:シルス・マリア)を製作した理由について尋ねた。

AMG_1916S「長い間、ジュリエット・ビノシュとは一緒に何かしたいという話をしていました。ある日彼女から、『私たち2人の関係を反映するような映画を作ってはどうか』と電話があったのです。考えてみると、私のフィルモグラフィーには、“ジュリエット・ビノシュ主演映画”が欠けていると感じました」と、企画の始まりを振り返ったアサイヤス監督。「彼女とは昔からの知り合いで、共通点も多くあります。まさにそこに映画の材料があるのではないか。つまり、過ぎていった長い時間がいかに私たちを変えていくのか。そうした時間について語る映画を作ることが出来るのではと思ったのです」

AMG_1953Sただし、テーマや脚本に関する直接的なビノシュの参画は一切なかったという。「脚本執筆中も定期的に会って彼女の声を聞くことが必要でしたが、何をテーマに書いているかはまったく話しませんでした。彼女はどういう映画になるのかということを、脚本が書き上がって初めて知ったのです」

AMG_1968S観客との質疑応答に移ると、本作でアメリカ人として初めてセザール賞(助演女優賞)に輝いたクリステン・スチュワートの起用理由について質問が上がった。『トワイライト』シリーズのヒットによって、アイドル女優的な見られ方をすることが多かったスチュワートだが、アサイヤス監督は、「独特の存在感がある稀有な女優だと思っていた」という。「最初に彼女を見たのはショーン・ペン監督の『イントゥ・ザ・ワイルド』(08)です。5分ほどしか登場しない端役でしたが、映画館を出た後も忘れられない存在感を示していました。カメラ映りが素晴らしく、映像の中の彼女は、とても強みと深さのある存在に見えました」とその素質を大絶賛。「ヨーロッパのインディペンデント映画に出演するということはクリステンにとって大きなリスク。普段慣れているような製作状況も、報酬も、居心地の良さもまったくない。でも私はその代わりに、これまでの出演作がもたらさなかったものを与えてあげることができると感じていました。つまり、人工的に登場人物を作り出すのではなく、彼女自身を発揮できる空間を与え、彼女の自発的で自然な部分を重視してあげる。そうした演技をすることで、自分自身を発見し、理解することができます。それが今後のキャリアの助けになるのではないかと思いました」

AMG_1891Sビノシュとスチュワートの共演については、「2人の関係はとてもバランスが良く、互いを刺激し合って、よい意味での競争心が働いていた」と証言したアサイヤス監督。しかし、「もし2人の気が合わなかったらこの映画は駄目になる」と、準備段階では大きなリスクを犯している意識があったことも告白した。結果それは杞憂に終わるが、この映画の成功のカギは2人の相性が握っていたと言っても過言ではない。「クリステンにとってジュリエットは、キャリアを通じて自由と精神の独立を保ち続けてきた女優という風に見えていたようで、彼女が歩んできたような道程をたどるにはどうすればよいのか学びたいと思っていたようです。また、ジュリエットの方も、クリステンの中に、自分と同じような映画に対する情熱と、芸術的な要求の高さを見て取っていました。私は彼女たちのそばにいて、2人の関係が進展していくのをドキュメンタリーのように撮影していただけです」と、作品を支えた女優たちのエピソードを語った。

AMG_2041S10月24日(土)から、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマカリテで公開が予定されている『アクトレス ~女たちの舞台~』。女優陣の貢献を絶賛していたアサイヤス監督だが、本作を観れば、男性でありながら、時の流れや成熟に対する女たちの心理を鋭くえぐった監督自身の手腕に最も驚かされることだろう。アルプスの山々を切り取った映像美、優雅なバロック音楽とともに、ぜひもう一度スクリーンで味わってほしい作品だ。

(取材・文:新田理恵、撮影:白畑留美)

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