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【レビュー】『夜、アルベルティーヌ』

2015.6.15

6-L'ASTLAGALE__main枝葉をかき分け、泥だらけになりながら、夜の闇の中を女性がひとり這う。やっと道路に頭を出すと、車のヘッドライトの光が汚れた彼女の姿を照らす。主人公の境遇を端的に表したシーンで『夜、アルベルティーヌ』は幕を開ける。

アルベルティーヌ・サラザン。1960年代、フランスの文壇に突如現れた女性だ。エキゾチックで個性的な容貌の下に隠された彼女の素性はかなり特異で、29歳という若さで死去するまでに、売春、窃盗、服役、脱獄を経験する波瀾万丈でハードな人生を送っている。本作は、66年の『ある日アンヌは』に続き、彼女の自伝的小説「アンヌの逃走」を映画化した2本目の作品である。

6-L'ASTLAGALE_sub11957年、強盗の罪で収監されていた刑務所の塀を乗り越えて脱走した19歳のアルベルティーヌは、着地に失敗して足首を骨折してしまう。そこで偶然彼女を救う男、ジュリアン。彼もまた堅気の人間ではない。互いが持つアウトサイダーの空気に惹かれ合ったのか、愛を交わすようになる2人。そんな普通ではない出会いから、その後の約1年間の生活を中心に映画は描いていく。

世界各地の植民地で独立戦争が勃発し、政治的にも不安定だった当時のフランス。警察の目におびえて暮らす主人公たちの周りにも常に不穏な空気が漂うが、そこには同時に、フランス映画好きにはたまらないエスプリも満ちている。当時急激に増えたアフリカ大陸からの移民とおぼしき黒人男性が踊るダンスホール、質素ながら独自のスタイルを持ったアルベルティーヌのファッション、安いワインと紫煙が似合う街角の小さなカフェなど、モノクロで撮られた世界は雰囲気満点。社会の底辺で蠢く人々に焦点を当てながらもどこか瀟洒で、フィリップ・ガレルの元妻で女優でもある監督ブリジット・シィのセンスがうかがえる。アルベルティーヌの“悪友”役を監督の娘エステル・ガレルが好演し、短いながらもインパクトある役柄で息子ルイ・ガレルが登場するのも見所だ。

6-L'ASTLAGALE_sub2孤児院で育ち、養父母の元で愛に飢えた子供時代を送ったというアルベルティーヌ。10代にして刑務所に収監され、28歳で著書が世に出るまで、一生の大半をやくざな道に生きた彼女にとって、彼女を闇から連れ出したジュリアンは唯一本当の愛を育んだ相手だったに違いない。その運命の出会いと2人のはじまりの1年の煌めきを象徴するような海辺のシーンが美しい。実はたまらないキラキラが詰まった作品なのに、モノクロだなんて。その演出がまた心憎い。

(文・新田理恵)

『夜、アルベルティーヌ』作品情報
L’Astragale
監督:ブリジット・シィ
出演:レイラ・ベクティ、レダ・カテブ、エステル・ガレル
2014年/フランス/97分/DCP/スコープ/ドルビー5.1/モノクロ
(c) DR


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